ヴァイオリンのビブラートには、動かす部位によって3つの種類があります。
肘から腕全体を使って振動させる方法です。より広い振幅の豊かなビブラートが
可能で、ロマン派の作品などで効果的です。
手首を振動の起点とする方法です。比較的習得しやすく、初心者が最初に学ぶことが
多いビブラートです。柔らかく優しい音色を生み出します。
指の関節から動かすビブラートです。速く細やかな振動が特徴で、上級者が状況に
応じて使い分けます。
この際に実は極めて重要な学習上の2つのポイントがあります。それは習得順と
腕のビブラートの練習方法です。
既述のように手首のビブラートは比較的習得し易いからと、このビブラートから習い
始めてしまうと、腕のビブラートが出来難くなってしまうのです。ですから3種類の
ビブラートを確実に習得するためには、連動する関節3つが統合されている腕の
ビブラートから始め、その上で、その一部を使うことになる手首、指の順番で学習を
しなければならないのです。
これは今日多くの演奏者において独自に類似した方法が用いられていますが、これは
レオポルト・アウアー先生が考案し、ヤッシャ・ハイフェッツに教えたやり方が、
本来の腕のビブラートなのです。当教室ではアウアー直系ということで、この
アウアー先生が考案された本来の腕のビブラートのかけ方の練習からスタートし、
カール・フレッシュが"Urstudien" (Carl Flesch)でポジション移動において留意
すべき内容として挙げた留意点も踏まえたうえで手首のビブラートを指導し、
最終的にはオタカール・セヴシックが示した留意点を踏まえた指のビブラートの順に
指導しています。
ビブラートの練習を始める前に、必ずポジション移動の技術を習得しておく必要が
あります。
その理由は、ビブラートの運動の基礎がポジション移動にあるからです。
つまり、左指が実際に「移動」するのがポジション移動ですが、そうではなく
同位置に左指が留まったままポジション移動の動作を行うことで、左指が指板に
当たる傾斜角度が変化することによる音程のゆらぎがビブラートだからです。
従って、ポジション移動の動作と、その際の左指の柔軟性が十分に習得されている
うえで学習すべき動作がビブラートなのです。
さらに、ビブラートは、ポジション移動の前でも後でも、奏でるべき音程が正しく
“響き”で確定できている状態を基点として、既述のようにゆらぎを与える点でも、
まずはポジション移動が正確・確実に行えるようになった上で学習を開始しなければ
ならない演奏技術なのです。
その際、ビブラートは求めるべき音程を中心に上下にかけられるべきものであり、
それを「人は高音域に敏感なので、求める音程の下に向かってかける」というのは
誤りです。にもかかわらず、練習は「求める音程の下に向かってかける」動作を中心
に行われるべきです。その理由は、ビブラートをかける動作として、求めるべき音程
の下に向かってかける動作のほうがかけ難いためです。下に向かってかける動作を
中心に練習することによって、結果として、求めるべき音程の上下に均等に音程の
ゆらぎを与えることができるようになります。
ヴァイオリンのビブラートは、一般的に、ヴァイオリンの音色に表情や温かみを
与える表現の技術だと捉えられています。ビブラートをかけることで、単調な音が
生き生きとした表情豊かな音色に変わる、という観点での指導が一般的です。
しかし実際には、求めるべき音程に若干のゆらぎを与えることにより、響きの強弱が
空気の振動の強弱となり、それが音の密度の濃淡となり、それにより水面に落ちた
水滴による波紋が周囲に広がるように、響きも遠くまで広がり届くようになる
という点こそが、実はヴァイオリンにおいてビブラートをかける真の目的でも
あるのです。このビブラートの本質と、正しい習得順序、アウアー直系の練習方法に
ついて、詳しくは『ヴァイオリンを響かせる――ビブラートの種類、練習方法、
その神髄』をご覧ください。
当教室では、こうした本格的なビブラートを一人ひとりの進度に合わせて丁寧に指導
しています。
東京都狛江市にある美しい音色・正しい音程・伝統の奏法重視の
「イワモト ヴァイオリン教室」
住所(狛江教室):〒201-0003 東京都狛江市和泉本町2-31-4メイプルビル301
営業時間 :10:30~23:30(日・月・水・木・土)